ホーム >> 刊行物 >> 安衛研ニュース >>No.19 (2010-01-08) >> 『WHO労働衛生協力センター世界ネットワーク(世界ネットワーク)会議 2』
『WHO労働衛生協力センター世界ネットワーク(世界ネットワーク)会議 2』 (理事 小川康恭)
10月19日から23日までジュネーブのWHO本部で開催されたWHO労働衛生協力センター世界ネットワーク(世界ネットワーク)会議では、5つのGlobal Plan of Action on Workers’ Health(GPA)に沿って進捗状況を検証すると共に、それらを達成するための本質的問題点を明確にしそれらを乗り越える方法に関して集中的に討議された。各GPAは以下のようにさらにグループ化されている。
GPA1;働く者の健康を推進するための政策手段を立案、実行する
1.1 国家レベルの行動計画とその概要
1.2 シリカ/粉じん
1.3 石綿関連疾患
1.4 健康あるいは医療業務従事者の健康障害予防
GPA2:職場での健康障害を予防し健康を増進する
2.1 職場における化学物質のリスクを評価し管理する方法を改善するための資源の開発
2.2 健康職場を形成するための国家レベルの枠組みと推進方策を展開するためのプログラム
2.3 世界的に脅威となっているHIV、結核、マラリア、インフルエンザに対する脅威の評価と対策を特にこれら感染症に脆弱な集団である出稼ぎ労働者に注目して開発する
GPA3:労働衛生機関へのアクセスを改善しそこでのサービスを向上させる
3.1 一次レベルでの労働衛生上の健康問題に対してサービスを提供する組織の展開
3.2 教育訓練ができる施設を構築することによる体制整備
GPA4:行動と実行のため証拠に基づいた情報を提供し合う
4.1 ナノ材料や気候変動のような近年新たに出現している問題に対する現実的な研究を促進する
4.2 労働者の健康に関する世界的な研究戦略を作る
GPA5:他の政策に労働者の健康に関係する事項を組み込んで行く
5.1 労働者の健康を守ることによる経済的利益を明らかにする費用便益研究を総括する
5.2 地球規模の影響が労働者の健康に及ぼすリスクを管理するための方法
5.3 危険な産業
これらの中で20日に検討会が開かれたGPA4.1について概略を以下に報告する。
GPA4.1ナノ材料や気候変動のような近年新たに出現している問題に対する現実的な研究を促進する
このグループでは主としてナノ材料と気候変動に関して話し合われた。
1.ナノ材料
ナノ材料の毒性に関する研究が緊急の課題であること、また新たに出現する問題を拾い上げるための効果的な情報収集窓口を作ること、リスク評価が重要であり、そのために労働衛生を主眼としたサベイランスシステム、曝露評価のための曝露登録システムの構築、さらには新たな粒状物質のモニター方法開発の必要性が提議された。
これらを進めるとき解決して行かなければならない問題として、ナノ材料測定の標準化がまだなされていないこと、作業曝露マトリックスがまだないこと、現在曝露測定法が高度で複雑な方法となっているので簡便な方法を開発しないと十分な管理ができないこと、さらには物質の社会利用の性格上また、職業性曝露ばかりではなく環境由来の曝露が起こり、複合曝露という視点も考慮する必要があることが議論された。また技術的問題以外にも企業の協力が得られにくいこと、バイオマーカー測定のための試料収集における倫理の問題等まだ基準が確立されていないこと等の障害がある。
討論会に各国から参加していた者より今何をすることが重要か投票をした結果は以下のようになった。
1 曝露登録システムの構築(12)
2 発展途上国に対するWHOガイダンスの作成(12)
3 職場におけるナノ材料測定法の詳細情報を収集する(10)
4 研究対策推進のための予算確保(5)
5 ナノ材料発散データから曝露を予測する方法の確立(0)
6 曝露評価のためのバイオマーカーの開発(0)
2.気候変動
地球規模気候変動の健康に及ぼす研究に関してはすでに様々な研究がなされている。そこで現在各国で進行しているプロジェクト及びそれらから得られているデータを収集しレビューする必要がある、すなわち他から学ぶ必要のあることが強調された。そのためにはワークショップを開催し、問題点を整理し現在の状況を総括すると共に今後の方向を明らかにした上で報告書を作成することが重要であると集約された。
3.その他
正規の議題とはならなかったが、欧米を中心としてグリーン産業が盛んになっているが今後これら産業における新たな労働衛生上の問題を検討する必要性が問題提起された。
(理事 小川康恭)


