労働安全衛生総合研究所

新人紹介

健康障害予防研究グループ   鈴木 健一郎(すずき けんいちろう)


 平成26年4月より任期付研究員として、健康障害予防研究グループのメンバーに加えていただきました鈴木健一郎と申します。どうぞ宜しくお願い致します。これまで私は、東京理科大学・二瓶好正先生(東京大学名誉教授)の下で、 顕微鏡学研究で博士を取得しました。当時の研究内容は、マイクロビームによる微粒子の計測分析方法の開発でした。博士取得後、生物物理学を学ぶため、ドイツ(ヘルムホルツゼントラムミュンヘン)に留学しました。帰国後、東京理科大学薬学部・武田健先生の研究室において、ナノマテリアルの血液脳関門透過性に関する研究に取り組みました。前任の北海道大学・遺伝子病制御研究所では、ポジトロン断層法 (PET) を用いがんの診断方法の開発を行って参りました。
 当研究所においては、産業利用を目的として製造されているナノマテリアルの労働衛生対策の強化に向けて、ナノマテリアルの毒性発現メカニズムや体内動態について研究を進めていきます。現在、ナノマテリアルの安全性に関する問題は、我が国を含め世界規模で最重要課題の一つと認識されています。この背景には、急速なナノテクノロジーの発展によって、多種多様のナノマテリアルが既に大量に製造されていることや、呼吸器系疾患との関係性が指摘されている「アスベスト」や「PM2.5」からの連想により、国民の安全性に対する関心が増大していることが挙げられます。しかし、ナノマテリアルのヒトに及ぼす影響について、的確な評価が難しいのが現状です。そのため、ナノマテリアルのヒトへの影響を早急に解明する必要がありますが、ナノサイズであるがゆえ、その潜在的な危険性はほとんど明らかになっていません。そこで、私は、ナノマテリアルの健康影響評価手法の開発に貢献し、ナノマテリアルの毒性発現メカニズムや体内動態の解明に向けて、微力ではありますが精一杯努力していきたいと思っております。
 (所属学会:日本衛生学会、日本産業衛生学会、日本医学物理学会)


環境計測管理研究グループ   井上 直子(いのうえ なおこ)


 平成26年4月1日付けで環境計測管理研究グループに着任致しました、井上です。
 博士後期課程修了後、独立行政法人の研究所、大学、公益財団法人の研究所を経て、現在に至っております。
 専門分野は分析化学で、学生時を含め高感度分析法の開発を中心として、機器分析、有機合成やポリマー合成を手法とした融合的な分析法の開発・研究を行ってきました。
 着任後はこれまでの研究経験をいかして、「作業環境測定のための芳香族アミンの高感度分析法の開発」に取り組み、発がん性が懸念される芳香族アミンの作業環境測定法に関する研究を行います。作業環境における光や温度の影響による芳香族アミンの酸化による測定評価への影響についても解析し、芳香族アミンの分析をより正確なものとし、より多くの人々が安心で安全な労働環境下で健康的に働ける環境整備の一端を担っていきたいと思っています。
 皆様のご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。
 (所属学会:日本分析化学会、日本農芸化学会、日本労働衛生工学会、日本産業衛生学会)


環境計測管理研究グループ   本郷 照久(ほんごう てるひさ)


 平成26年度4月1日付けで環境計測管理研究グループに任期付研究員として着任いたしました。学位取得後は大学に8年間勤務し、環境や人体にとって有害な物質を吸着除去、酸化分解するような高機能性無機材料の研究を行っておりました。また、廃棄物を原料(=未利用資源)として、有用な機能性材料をつくり出すような資源リサイクリングに関する研究も行っておりました。これらの機能性材料は自ら合成し、電子顕微鏡などさまざまな分析・計測機器により物理化学的な特性を評価することによって、その基本的物性を明らかにしてきました。これまでの研究で培われた物性評価技術を今後の研究に生かしたいと思っております。
 着任後は、作業環境における健康影響を示す物質に関する新しい研究活動に携わることになります。具体的には、肺内のアスベストなどの繊維状物質の電子顕微鏡による計測技術開発に関する研究を計画しております。至らぬ点も多々あるかと思いますが、皆様よりご指導、ご高配を賜りますよう、お願い申し上げます。
 (所属学会:日本化学会、化学工学会、ゼオライト学会、日本粘土学会、日本労働衛生工学会、日本産業衛生学会)


人間工学・リスク管理研究グループ   菅間 敦(すがま あつし)


 平成26年4月1日付けで人間工学・リスク管理研究グループに任期付研究員として着任いたしました。平成26年3月に、首都大学東京大学院システムデザイン研究科にて博士(工学)の学位を取得しました。所属学科は経営工学を基盤としており、私はその中で作業者の筋骨格系障害の防止に向けた身体負担評価の研究に取り組んでおりました。
 昨今の製造業においては、製品生産期間の短縮や多品種少量生産への対応から、働きやすい作業環境構築に対する取り組みが、時間的にもコスト的にも困難となりつつあります。そのため現在は、設備や工場の設計段階から、人間機能を解析するソフトウェアを用いて作業者の作業性や身体負荷を推定する手法が注目を集めています。私もそのシステムの高性能化を目指し、実作業を模した環境下での実験結果からモデルを改良し、理論と現実のギャップを埋める取り組みを行っておりました。また、人の姿勢・動作、筋活動、心理尺度などの指標から、身体負担を総合的に評価する取り組みを行っておりました。
 昨今の産業現場では、労働災害の多くが非定常作業時に発生しておりますが、非定常作業に対してはコストの点から十分な設備的対策が取られにくい現状があります。また、作業場が頻繁に変わる業種や作業場が狭い現場では、大型になりがちな安全器具・装置の導入は簡単ではなく、たとえ導入されていても、作業効率を重視するあまり正しい作業手順が省略される場合も見受けられます。そのため、設備的対策に加えて、人的対策による労働災害防止への取り組みや、作業性と安全性を両立する装置および管理手法の提案が重要になると考えられます。
 当研究所においては、脚立等をはじめとする用具の使い方や作業方法が、作業姿勢の安定性や身体負担、作業性に与える影響を調査し、安全かつ作業しやすい環境の構築と労働災害の防止に貢献していきたいと考えております。至らぬ点も多々あるかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。
 (所属学会:日本人間工学会、日本経営工学会、日本機械学会)


人間工学・リスク管理研究グループ   ソン スヨン


 平成26年4月1日付けで、人間工学・リスク管理研究グループに任期付研究員として着任いたしました。韓国国立慶北大学を卒業後、文部科学省の国費留学生として来日し、九州大学大学院芸術工学府にて博士(芸術工学)を取得しました。その後、九州大学の学術研究員としての勤務を経て、現在に至っております。大学院では、作業現場で働いている労働者の安全確保に重要な役割を果たす防護服に着目し、防護服着用による作業者の負担評価、特に暑熱ストレスと動作性(作業・動きの容易性)を評価するテスト法開発に取り組みました。労働者の現場活動実態と防護服着用による暑熱ストレス、動作性を阻害する因子、障害原因などを把握するアンケート調査を行い、その結果に基づき、様々な防護装備着用時の身体負担を評価する測定法に関する研究を行ってきました。
 地球温暖化に伴う暑熱ストレスの増大は、夏季の労働現場での熱中症災害を多発させています。熱中症に関連する徴候として、めまい・ふらつきなどの平衡機能失調や倦怠感・虚脱感などの疲労症状があることから、暑熱ストレスは運動調節機能や認知機能にも悪影響を及ぼし、労働者の動作性を低下させる可能性があると考えられています。これは熱中症の発症のみならず、転倒・転落事故やヒューマンエラーのリスク増大に深くかかわってくると考えられます。夏季に熱中症を誘発する暑熱ストレスと労働現場の墜落・転落による災害を減らすことは厚生労働省の第12次労働災害防止計画の重要ポイントであり、社会的にも重要なニーズだと考えられます。
 今までの研究経験を生かし、当研究所においては、暑熱ストレスと身体作業の複合負荷による運動調節機能変化と認知機能影響を同時に検討する研究を行いたいと考えております。至らない点は多々あると思いますが、今後も労働者の作業負担の軽減と、作業効率の改善に役立つ研究に邁進したいと考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。
 (所属学会:日本産業衛生学会、日本人間工学会、日本生理人類学会、人間-生活環境系学会、日本家政学会被服衛生学部会)


刊行物・報告書等 研究成果一覧