労働安全衛生総合研究所

働く人の安全に関する研究施設の公開(清瀬地区)
–平成28年度一般公開を終えて–

 4月20日(水)13時から17時まで、清瀬地区の平成28年度研究施設一般公開を開催いたしました。当日は絶好の天気に恵まれ、近隣の方々をはじめ、大阪等遠方からも多数の方々にお越しいただき、最終的に422名の方々にご来場いただきました。
 清瀬地区では、所内12カ所の会場において、最近の研究成果の紹介、実験デモ、展示等、合計13件の公開と1件の講演を実施し、どの会場においても、本当にたくさんの方々にご来場いただきました。以下、各施設の公開等の様子を簡単にご紹介します。

実験施設の公開と展示


(1) 施工シミュレーション施設

① 『大型建設機械の転倒防止』
 当研究所で開発した、大型建設機械を設置する地盤の地耐力を確認するための試験装置や、土砂崩壊を検知するためのセンサー等をご覧いただくとともに、掘削用機械の転倒防止に関する研究成果等について説明をしました。




(2)材料・新技術実験棟

② 『ベルトスリングの破断実験(吊り角度の影響)』
 クレーンなどの荷役作業では、ベルトスリングの吊り具に生じる「吊り角度」が安全管理の面では大切になってきます。ここでは、ベルトスリングの破断試験を行い、吊り角度が破断荷重に及ぼす影響について調べました。そして、吊り角度が大きくなると、破断荷重が低くなることを紹介しました。
 


(3)機械安全システム実験棟

③ 『機械設備の安全対策』
 腰痛対策として導入されている入浴介護機器について、実際の使用方法をご覧いただきながら、介護者の手指が機器に挟まれるリスクなどがどのように発生するのかを説明いたしました。




(4) 共同実験棟

1) VR実験室
④ 『車両系の機械を対象としたシミュレーション装置』
 ドラグ・ショベルなど車両系の機械作業時に、転落及び接触などの危険事象や、関連する安全装置について、シミュレーション装置の立体視動画像を用いて解説しました。また、フォークリフト模擬走行を通じて、運転者前方視野支援用安全補助装置の効果を実演しました。




2) コンピューター制御室
⑤ 『脚立からの転落を防止する』
 脚立使用中の労働災害の現状と、脚立への適切な立ち方を比較する実験研究について紹介しました。また、人の作業姿勢や荷重を計測する装置について説明しました。




3) 風洞実験室
⑥ 『強風に対する足場の倒壊防止』
 風洞実験施設では、風を発生させる装置や風洞内をご覧いただきながら、この施設で行った風に対する足場の倒壊防止に関する実験について説明しました。見学者からたくさん質問もいただき、強風により発生する建設災害について、皆さんご関心があるようでした。




(5) 配管等爆発実験施設・中規模爆発実験室

⑦ 『静電気の発生と爆発・火災の実験』 
 簡単な器材を用いて、静電気の発生原理、放電の種類のエネルギーならびにガスおよび粉じんへの着火実験を行いました。また、歩行による人体の帯電実験装置および静電発電機を展示するともに、災害を再現したビデオを上映しました。




⑧ 『ガス・蒸気の爆発・火災』
 本公開施設において、パネルでは燃焼の3要素、爆発限界、引火点、爆発と火災の違いといった基礎知識について説明を行いました。また実演では、引火点が異なる有機溶剤等に着火を試みた際の挙動の違い、有機溶剤等に触れた排水の爆発危険性、容器の閉塞状態が異なると爆発の威力(音)が変わることをお見せし、ガス・蒸気の爆発・火災危険性について体感していただきました。




(6) 環境安全実験棟

1) 研究討議室
⑨ 『ロールボックスパレット(カゴ車)使用時の労働災害防止』
 スーパーマーケット等で使用されている人力運搬機の1つであるロールボックスパレット(カゴ車)を安全に使うために当研究所と厚生労働省が作成した簡易マニュアルの内容を中心にご紹介しました。その他、ロールボックスパレット作業用として当研究所と企業が共同開発した手袋一体型プロテクターの着用体験を実施しました。




2) 人工環境室
⑩ 『熱中症を誘発する暑熱環境とその予防対策』
 温度・湿度が異なる2部屋の人工環境室に入っていただき、皮膚感覚と実際の温度・湿度の違いを体感していただきました。様々なWBGT計の測定上の注意点を実物を見ながら説明しました。  



(7) 本部棟1階・第2会議室 
 次の2件の研究紹介を行いました。 
⑪ 『年齢ごとの労働災害件数と発生率』 
 「転倒」や「切れ、こすれ」などの労働災害は、どの年齢帯で多く発生しているのか、そして、どの年齢帯で発生率が高いのか、といった災害統計分析について発表しました。また、厚労省が公開するデータベースをパソコンで分析する体験をしていただきました。
 



⑫ 『化学工場にある貯槽での爆発・火災・中毒』 
  化学工場では、運転中だけではなく保守作業や解体工事の時にも爆発・火災・中毒災害が発生しています。スライドを使って、災害の発生状況のほか、災害防止のために重要な作業である「作業開始前の換気」について、どのくらいの換気時間が必要かを予測できる簡易計算図を紹介し、その使い方を説明しました。

 



(8) 本部棟2階・大講義室前ロビー 
⑬ 『昔の労働安全衛生ポスター展』 
 国内外の労働安全衛生の貴重な史料として、当研究所で収集した労働安全衛生ポスター40枚を展示しました。写真を撮られている来場者の方もおられ、皆さん熱心に鑑賞されておりました。 

 



(9) 本部棟2階・大講義室 
講演
⑭ 『熱中症を誘発する暑熱環境とその予防対策』 
 「客観的に暑さの危険性を知るには?」「作業前に身体を冷やす予防対策」「予防対策製品を用いる効果」という内容で、WBGT(湿球黒球温度値)の測定上の注意点、プレクーリングやファン付作業服が暑熱負担に及ぼす効果について説明しました。 

 



おわりに


 平日にもかかわらず、本年度も多数の方々にご来場いただきました。この公開をきっかけとして、当研究所の業務についてご理解いただくとともに、わたくしどもの研究成果等を職場の安全活動にご活用いただければ幸いです。
 今回も多数のご来場者を想定し、ご来場者が分散していただけるように実演のタイムテーブルを設定しましたが、公開施設内に入りきれない場合や説明の声が聞こえにくい場合がありました。まことに申し訳ございませんでした。その他、皆様からいただいたアンケートの貴重なご意見と合わせて、来年度の一般公開では改善をしていきたいと思います。
 最後に、本年度の清瀬地区一般公開の内容については当日配布させていただいたパンフレットにも概要を記載しております。今回ご来場できなかった方は下記のURLからご覧ください。
  https://www.jniosh.go.jp/announce/2016/open2016/pdf/pamphlet_kiyose.pdf

(労働災害調査分析センター 田井鉄男)

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