労働安全衛生総合研究所

研究報告 RR-26 の抄録

可燃物の酸化に及ぼす水蒸気の効果

RR-26-1
琴寄崇
 未添加ポリプロピレンフィルムの自動酸化に及ぼす雰囲気中の水蒸気の効果を高温赤外の手法を用いて調べたところ,湿潤雰囲気中では酸化が抑制されることが示された。この効果は,ハイドロパーオキサイドの水の生成を伴う分解反応が気相に存在する水蒸気によって化学平衡的に抑えられること,によるものと考えられる。(図9,参14)

人工環境下における電気設備の安全化に関する研究(第3報) –低圧の容量回路及び抵抗回路の開閉火花による可燃性固体の着火限界–

RR-26-2
田中隆二,市川健二
 前報で低圧直流誘導回路の開離火花による可燃性固体の着火限界を測定したが,今回は,低圧直流容量回路及び低圧直流抵抗回路の開閉火花による可燃性固体の着火限界を測定した。
 可燃性固体として用いた試料は,主として和紙で,ふん囲気として,100%酸素のほかに,O2 / N2 , O2 / He の混合ガスを用い,その気圧及び酸素濃度を変化させた。気圧は大気圧以上 1.3 MPa (絶対気圧)までの範囲である。
 試料間の差,気圧の影響,酸素濃度の影響のほか,回路キャパシタンスの影響,電源電圧の影響についても調べ,過剰酸素ふん囲気中でも電気火花によって可燃性固体に着火しえないような本質安全回路の設計基準の基礎資料を得た。(表2,図17,参6)

災害発生間隔の分布に関する研究

RR-26-3
花安繁郎
 災害発生間隔の分布を安全管理に応用する目的で,幾つかの観点から,発生時間分布の考察を行なった。
 災害がランダムな事象であれば,発生間隔の分布は指数分布に,また複数個の災害が発生する時間の分布はガンマ分布となる。これらの分布のパラメーターを,度数率から推定することにより,災害度数率と発生時間とを関係づけることが出来た。また幾つかの集団が独立に災害を発生している時,集団全体としての発生間隔の分布は,個々の集団の度数率を合計した度数率をパラメーターとした指数分布となることを示し,更に災害件数と発生時間を知ることによって,度数率の区間推定を行なう方法について検討した。(図22,参3)

管中の平面爆ごう波を起爆源とする球面爆ごう波の生成

RR-26-4
松井英憲
 アセチレン–空気系;アセチレン,エチレン,プロパン,水素およびメタン–酸素系およびエチレン,プロパン,水素–酸素–窒素系の混合ガスについて,管中の平面爆ごう波による球面ガス爆ごう波の直接起爆モデルを仮定し,起爆限界管径のデータから起爆限界エネルギーを算定した。この結果,種々ガスの種類および濃度に対して,10-3 ・104 J にわたる起爆限界エネルギーが得られた。得られた結果と従来得られている他の測定法による結果との比較検討がなされた。
€  炭化水素ガス濃度に対する起爆限界エネルギーの最小値は,燃焼生成ガスが CO と H2O になる不完全燃焼組成に存在することが実証された。(図9,表1,写真2,参16)

有機化合物の発火温度の体系化についての研究(第1報) –鎖式飽和1価アルコール類の発火温度–

RR-26-5
柳生昭三
 有機化合物の発火温度を体系化するためには,まず物質の分子構造と発火温度の間の関連性を追究することが必要であろう。このことについては,すでに Zabetakis らによってパラフィン系炭化水素類の平均炭素鎖長と発火温度の関係が報告されている。
 この報告では,上記の関係をアルキルアルコール類に適用してみた。その結果,パラフィン系炭化水素の場合と類似した関係が,アルキルアルコールについても認められた。(図10,表1,参4)


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