労働安全衛生総合研究所

研究報告 RR-28 の抄録

消炎容積に関する研究 –管中の初期火炎の伝播限界について–

RR-28-1
林年宏
 放電火花により爆発性混合ガスに点火したとき火炎伝播が生ずるか否かは,最初に形成された火炎核がある一定の大きさ以上に成長できるかどうかによって決まる。この限界値は消炎容積と呼ばれ,点火源の安全化に利用できる現象であるが,従来あまりデータが得られていない。この報告では,主としてガラス管(内径6–20mm)を用い,管端での点火により火炎核は生ずるがそれ以上は火炎が伝播しない限界圧力をメタン–空気混合ガスについて求め,この結果から,大気圧下の初期火炎が伝播しない限界の管径を推定し,この限界径と消炎容積の関係を論じた。また,放電エネルギー,管の長さと材質,混合ガス濃度などの影響についてしらべたほか,燃焼速度の大きい水素–空気混合ガスについても実験しメタンの場合と比較した。(図9,表1,参6)

自然発火試験装置による熱発火限界温度の算出法ならびに数種の料品の自然発火性の検討

RR-28-2
琴寄崇,内藤道夫
 RR-27-2にて報告した自然発火試験装置を用いて数種の料品の自然発火性状とそれらの反応機構を調べた。本装置により自然発火過程の誘導期における極めてゆっくりした発熱反応の活性化エネルギおよび頻度因子を断熱零次の条件の許で求めることができる。フランク–カメネツキの熱発火限界条件を適用して,色々な料品の熱発火限界温度を求める方法を示した。(図10,写1,表3,参19)

鋳物材の疲労き裂伝播挙動の破壊力学的およびフラクトグラフィ的特性に関する研究

RR-28-3
田中正清
 疲労破壊現象を解明し材料の破壊に関係した災害の原因調査や防止の為の資料を得ることを目的とした研究の一環として,5種の鋳物材について,フラクトグラフィ的および破壊力学的手法により疲労き裂成長挙動を検討した。各々の鋳物材の疲労き裂伝播速度は圧延材の場合と同様に,Elber のき裂閉口概念によって平均応力の効果を考慮した有効応力拡大係数の関数として表現される。破面には各々の材料に特有の微視破面形態が観察されたが,さらに破面と負荷の定量的対応づけの可能性として,従来からのストライエーション間隔のほかに特定の微視破面形態の占める面積率と応力拡大係数の関係の存在が確認された。

最大引張歪クライテリオンの砥石破壊への適用 –ビトリファイド砥石の直径方向圧縮破壊の場合–

RR-28-4
粂川壮一,吉久悦二
 最大引張歪があるクリティカルな値に達すると破壊を生ずるとする最大引張歪クライテリオンをビトリファイド砥石の円輪形試験片および円板形試験片の直径方向圧縮破壊に導入し,実験結果より算出した円輪形試験片と円板形試験片の最大引張歪の等価応力につき比較考察を試みた。その結果,最大引張歪クライテリオンの適用が妥当であることが判った。(図11,写真3,表4,参11)

コロナ放電による金属球の帯電特性に関する実験的考察

RR-28-5
田畠泰幸
 コロナ放電によって粉じん等を帯電させる場合,その帯電量を求める理論式は M.Pauthenier によって提案されている。しかし,この式によっては帯電量を直接求めることができない。したがって,ここでは帯電量を求める実験式を誘導した。この実験式は先の理論式に比較して,コロナ放電電極に印加した電圧,コロナ放電電流等,外部から簡単に測定できる物理量によって表わされており,帯電量の推算等が容易にできるものである。なお,この実験式については鋼球を用いて検証実験をし,これから得られる実験値ともかなりよく一致することを確認した。ただし,検証実験はコロナ放電電極として同軸円筒電極を使用しており,鋼球には直径5.7mmの2種のものを用いて実施した。(図8,参考文献7)

電気粘性流体制御形多関節人工指のバイラテラル制御 –制御要素としてのウインズロクラッチの動特性–

RR-28-6
杉本旭,近藤太二,深谷潔
 本研究ではバイラテラル制御用マニピュレータの駆動装置として用いるウインズロクラッチの開発を行ない,その一般的特性を把握し,他の方式による既存のクラッチと比較検討を行なった。
 その結果,ウインズロクラッチは,それの持つ個々の特性については他の方式と比較してそれ程秀れているとは言えないが,制御システムの構成如何で改善が可能であり,しかも,形状が簡単なため,非常に小型となる。したがって,バイラテラル制御による多関節人工指のように,コンパクトな多自由度を要求する場合に非常に秀れていると言える。


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