労働安全衛生総合研究所

安全資料 SD-70 の抄録

電撃危険性と危険限界

SD-70
田中隆二,市川健二

まえがき

 わが国では毎年電撃による死亡者数は数百名に達しており,重傷者数はさらにその数倍にも及んでいる.

 電気エネルギーの応用分野の開発,利用技術の多岐化など電力需要の増大のほか,送配電電圧の格上げなどの理由により,電撃防止に対する努力にもかかわらず,電撃による死傷者数は依然として大幅なる減少を示していない.

 他の原因による災害の場合と同様に,電撃による災害を防止するには,先ず第一に災害危険性を定量的に把握することである.すなわち,電撃による危険限界を正しく認識することが重要である.

 電撃による危険限界については,従来,主として動物による生体実験結果が多く示されているほか,人体による実験結果も報告されている.これらは,ほとんどがアメリカなど外国で行なわれたもので,わが国ではきわめて少ない.

 そこで,本文では外国での実験結果を中心に電撃による危険限界について総括して述べることにする.

 なお,本文の第1章-第4章に関する部分は,筆者の一人らが以前にまとめた「電撃危険について(1965)」に最近のデータを加筆して修正したものであり,これに以下述べるような,超高圧送電による静電誘導による電撃,海洋開発に伴ない話題となってきた水中での電撃などの諸問題を加えて,新たに当研究所の技術資料として紹介するものである.


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