労働安全衛生総合研究所

技術指針 TR-90 の抄録

安全靴技術指針

TR-90
永田久雄,深谷潔

はしがき

 安全靴の着用については,労働安全衛生規則第558条によって,事業者は通路等の構造又は作業の状態に応じて安全靴その他の適当な履物を定め,作業者に使用させることが義務づけられている。しかし,安全靴の構造や使用に関する規格や基準としては,JIST8101(革製安全靴)からJIST8105(発泡ポリウレタン表底安全靴)までの各JIS規格があるだけであって,しかもこれらの規格は主として安全靴を構成する材料や安全靴の製法ごとの性能を定めたもので,安全靴全般にわたって共通に適用できる必要事項を定めた規格や基準はない。

 一方,安全靴が広く作業者に受け入れられるためには,安全靴の機能性(履きやすさ,疲労防止等)において十分な性能を備えることが必要であるが,これに関しても適当な規格・基準がない。
 このような情勢に対処して,当所では安全靴の技術指針を制定するため,昭和62年に,その原案作成を(社)産業安全技術協会に委託したところ,今般その答申を得たので,さらに所内において検討を加え,ここに技術指針として発表するものである。

 なお,本指針原案作成の過程において平成2年9月,ISO/TC94よりDIS 8782-1「安全靴第1部;安全要件」が提案され,比較的近い将来にISOの安全靴の規格が実現することが予想されるに至ったので,本指針においても国際規格に対する整合を図るため,次に示す全体的な方針に反しない範囲でISO DISの要件や試験方法を導入することとした。

 本指針では,安全靴の必要事項を共通事項と特定事項とに分け,それぞれの事項ごとに性能の区分(等級分け)を行うとともに,これに基づく安全靴の選択基準と保守方法を定めてユーザーの便宜を図った。しかし,これらの必要事項の中にはその性質上互いに相反するものや使用状況によっては不要なものもあり,また,すべての事項について優れた安全靴を製造することは技術的にも経済的にも困難と考えられる。ユーザーは選択基準に従って必要な事項を必要な程度に満たすような安全靴を選択するとともに,メーカーは本技術指針に定められた必要事項を,ユーザーの必要性に応じて満たすことができる安全靴を供給するように努力することにより,わが国において,より優れた安全靴がより広い分野で使用されるようになることを期するものである。

 最後に,本指針の原案作成にあたり,絶大なるご協力を賜った(社)産業安全技術協会及び委員各位に対し,深く感謝の意を表します。

平成3年3月1日  労働省産業安全研究所  所長  田中 隆二 


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