労働安全衛生総合研究所

技術指針 TR-No.34 の抄録

爆発圧力放散設備技術指針

TR-No.34

 乾燥機や集じん機などの汎用装置は各種の産業分野において広く利用されているが、引火性液体や可燃性粉じんを処理する目的に用いることも多いため、内部で爆発を生ずる可能性が大きく、現実に多くの災害が発生している。しかし、こうした装置内での爆発の発生を完全に防止することは、技術的あるいは経済的に見て困難な場合も少なくない。そこで、万一これらの装置内で爆発を生じたとしても、被害を最小限度に止め、周辺の作業者や設備等に被害・損傷が及ばないようにする爆発防護の対策が必要となる。

 この目的にかなう代表的な方法は、爆発時に発生する圧力を安全に大気中に放散させて装置の破壊を防ぐ爆発圧力放散設備の設置であるが、わが国ではいまだその実用化と普及をすすめるための技術的指針が明確にされていない。たとえば労働安全衛生規則第294条においては、爆発を生ずるおそれのある乾燥設備には爆発圧力を放散させるための爆発戸、爆発孔等を設けることとしているが、その具体的な方法については示されていない。

 当研究所では、従来から可燃性のガス・蒸気や粉じんによる爆発災害の防止に関する研究を行ってきたが、爆発に対する防護対策としての爆発圧力放散設備に関する技術的指針を示すことの必要性を認めたため、産業界の協力を得て当研究所の技術指針として公表することとし、社団法人産業安全技術協会に指針原案の作成を依頼した。

 この指針は、同協会に設けられた「爆発圧力放散設備技術指針原案作成委員会」において、NFPA68:Guide for Venting of Deflagrations (1994)などを参考として審議された結果に補足検討を加えて公表するものであり、爆発防護の基本的考え方に始まり、爆発圧力放散設備の設計方法、設置・使用上の留意点、保守・点検の手順などについて技術的な指針が示されている。なお、発熱化学反応の暴走による過圧力に対する圧力放散設備と区別するために、この指針ではガス爆発・粉じん爆発に対する爆発圧力放散設備を「爆発放散口」と呼んでいることをお含み願いたい。

 最後に、指針原案の作成に協力いただいた社団法人産業安全技術協会、原案作成委員会委員及び関係各位に深く感謝します。

 この指針が産業現場において広く活用され、爆発災害の防止に有効に役立つことを切に期待します。

平成10年3月1日  労働省産業安全研究所  所長 田畠 泰幸 


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