労働安全衛生総合研究所

昨年の工場火災・爆発の発生状況と断熱材の燃焼

1.発生状況


 昨年(2022年)新聞等で報道された国内の主な工場火災と爆発を表1に示します。 1月には黄リンを原料にして高純度の赤リンを製造する工場で爆発が発生し、2人が重軽傷を負いました。黄リンは自然発火性固体として知られ、「職場のあんぜんサイト」のSDS情報によると30℃で発火する危険性の高い物質です。有害性の高い物質でもあり、急性毒性、皮膚腐食性・刺激性、生殖毒性などがあります。
 2月には新潟県村上市内の菓子製造工場で5人の従業員が死亡する火災が発生しました。報道によると、乾燥機付近で発火し、立ち上がった火炎で天井に吹き付けてあった断熱材に引火し、火災が拡大したことが原因とされています。また、日ごろから避難訓練を行っていなかったことから、現場にいた作業員の避難が遅れたことが指摘されました。
 3月に宮崎県延岡市内の火薬製造工場で発生した爆発では、主な建物が吹き飛んで消失し、現場作業員が行方不明になりました。火薬類の取扱いにおける危険性を改めて認識させられました。最近(2023年1月)、事業場による調査結果が公表され、ニトログリセリン(液体)が外気温の低い時期に貯蔵されていたことで一部が結晶化して鋭敏となり、その後の取扱い中の衝撃で起爆したことが推測されました。
 4月以降も工場で火災や爆発や発生していますが、9月の岐阜県犬山市の包装フィルム工場を除き、幸い、けが人が無かったか死亡者が無かったものでした。

表1 2022年に発生した主な工場火災・爆発
場所 概要
1 宮城県大崎市 黄リンを原料にして高純度の赤リンを製造する工場で爆発が発生し,2人が重軽傷を負った。
2 新潟県村上市 菓子製造工場で火災が発生し,5人が死亡した。
3 宮崎県延岡市 火薬製造工場で爆発が発生し建物が吹き飛んで消失した。6人が死傷,うち1人が死亡した(行方不明)。
4 宮崎県延岡市 維製造工場で火災が発生した。けが人なし。
5 愛媛県四国中央市 製紙工場でボイラー付近から火災が発生した。死傷者なし。
6 鳥取県境港市 合板製造工場で火災が発生し,2人がけがを負った。
8 静岡県浜松市 自動車製造工場で機械から出火し火災が発生した。けが人なし。
9 静岡県磐田市 プラスチックリサイクル工場で火災が発生し,火災の影響で190戸が停電した。けが人なし。
宮崎県延岡市 食品用ラップ製造工場で火災が発生し,乾燥機に入った粉状の原料が燃えた。けが人なし。
広島県広島市 食品製造工場でフライヤーから出火し火災が発生した。けが人なし。
岐阜県犬山市 包装フィルム工場で火災が発生し,消火中に逃げ遅れて2人が死亡した。
10 秋田県秋田市 合板製造工場の木材乾燥用ドライヤーから火の粉が出て,延焼した。けが人なし。
12 東京都墨田区 せっけんなどを製造する化学工場で火災が発生し,1人が煙を吸った。
三重県亀山市 アルミニウムリサイクル工場でメンテナンスのためバーナーを使ってダクトを切断中、アルミニウムの粉じんに着火し,火災が発生した。けが人なし。
岐阜県中津川市 産業用換気扇を製造している工場のロボットで製品を塗装する棟で火災が発生した。けが人なし。

2.断熱材の火災事例


 表2に建築用断熱材として使われる硬質ウレタンフォームの代表的な火災事例を示します1)。燃焼の際には黒煙のほかCOなどの有害物が生成するため,火災の発生で死傷者が増える傾向があります。また,大量の黒煙により避難経路を見失いやすくなります。昨年,村上市内で発生した菓子製造工場の火災においても,天井に吹き付けられていた発泡ウレタン(硬質ウレタンフォーム)が火災拡大の要因であったと推定されています2)


表2 硬質ウレタンフォームの代表的な火災事例1)
時期 場所 死者数 概要
1990 年 北海道 1 ボルト溶接取付中に硬質ウレタンフォームに引火。
1995 年 栃木県 4 多目的ホール建築現場 , 溶断の火花が硬質ウレタンフォームに引火。
1998 年 宮城県 1 きのこセンタ新築工事 , 溶接作業と硬質ウレタンフォームの吹付け作業を同時に行い溶接火花で出火。
2008 年 青森県 0 りんご貯蔵施設新築工事。溶接作業中に塗装材料に引火しその後壁の硬質ウレタンフォームに着火。
2009 年 兵庫県 1 製粉工場。フィルタータンクから出火し,火炎により天井の金属サンドイッチパネルの心材である硬質ウレタンフォームに着火。
2015 年 北海道 4 きのこ工場改修工事。パイプ溶断作業中に硬質ウレタンフォームに着火。
2017 年 東京都 0 食品物流倉庫解体工事。溶断の火花が硬質ウレタンフォームに引火。
2018 年 東京都 5 オフィスビル新築工事。溶断作業中に地下ピット天井部の硬質ウレタンフォームに着火。

3.難燃性硬質ポリウレタンフォームの燃焼性実験


 研究所では建築用断熱材の一つである難燃性の吹付け硬質ウレタンフォームを試料とし、着火や燃え拡がりなどの燃焼性を実験的に調べました。その結果、試料片がJIS規格に適合して難燃性を有しているものであっても、試料片を組み合わせた一定の配置の場合には火災が拡大することを明らかにしました(写真1)3)。ただし、小寸法の試料での実験であるため、施工される実規模の寸法・同じ配置で火災が拡大するかどうかは研究者で意見が分かれるところで不明な点があります。


写真1  試料寸法300mmの配置9'での燃え拡がりの様子

写真1  試料寸法300mmの配置⑨'での燃え拡がりの様子


4.まとめ


 近年、大規模な倉庫が増え、相次いで倉庫火災が発生しているとから防火対策が求められています4)。倉庫では工場と同様に断熱材や断熱材を金属の板で挟んだサンドイッチパネルが使われたりしています。建物の開口部が少ないことから、倉庫内で一度火が上がると、不完全燃焼で大量の有害物を発生し、火災が拡大して逃げ遅れたりして大きな被害となることが予想されます。工場や倉庫の改修や解体などでガス切断器や溶接器を使う場合には、当該作業周囲を養生し、すぐに消火できるような対策が求められます。硬質ポリウレタンフォームを含む発泡プラスチック断熱材に関する火災防止については従来から行政機関5-6)が啓発を行っているところですが、メーカー側の日本ウレタン工業協会1)の情報を得ることも望ましいです。


参考文献

  1. 大川栄二,谷口和生,和田康一:建設現場における発泡プラスチック断熱材の火災防止について,火災,Vol.69,No.2,pp.21-26,2019.
  2. 新潟県村上市で発生した工場火災に係る消防庁長官の火災原因調査 中間報告の公表,総務省消防庁,https://www.fdma.go.jp/pressrelease/houdou/items/cf3de8ff43d91834b30f49931ad7cd1de74c7bfb.pdf(2023年2月13日アクセス)
  3. 八島正明:難燃性硬質ポリウレタンフォームの燃焼性 -小寸法試料を使った実験-,日本火災学会論文集 Vol.72,No.2,pp.11-23,2022.
  4. 小林恭一:工場及び倉庫の火災の発生状況について,火災,Vol.72,No.6,pp.2-7,2022.
  5. 建設現場における発泡プラスチック系断熱材による火災災害の防止の徹底について,厚生労働省基発第4 号の4,平成8(1996)年1月29日.
  6. 東京消防庁:多摩市唐木田の新築工事中の火災を踏まえた防火安全強化の推進,火災,Vol.69,No.2,pp.2-5,2019.

(化学安全研究グループ 統括研究員・部長代理 八島 正明)

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