労働安全衛生総合研究所

爆発・火災に繋がる静電気放電って何?

 静電気を感じやすい冬になりました。車を触ると突然「バチッ!」とくる静電気放電、毎日のように不快な思いをする方も多いことでしょう。産業現場では、粉体原料を含む絶縁物を広く使用するため静電気放電が発生しやすく、思いがけない火災・爆発災害に繋がることが少なくありません。ここでは、静電気に起因する災害を防止する上で最も大事な項目である「静電気放電」について詳しくご紹介します。
 まず、静電気放電とは、電界強度が媒質の絶縁破壊電界強度に達したときに起こる現象であり、一般的に空気中で電界強度が3 MV/m以上になると、単発的に起こる現象です。静電気放電は、帯電物体の種類(導体、不導体)、形状等により、コロナ放電、ブラシ放電、火花放電、バルク表面放電、沿面放電の5つに分類することができます。多くの文献で雷状放電という種類も見られますが、産業現場で発生する可能性はほとんどないのでここでは省略します。なお、これらの情報は産業現場により広く発信するため、一部の内容はTIISニュースでも説明しました1)


コロナ放電

(1) コロナ放電:針などの接地された尖鋭な金属が帯電物体に接近したときに、先端部付近でのみ発生する微弱な放電で、帯電物体の極性により放電の様子が異なります。コロナ放電の開始電圧は接地金属の曲率半径に依存し、曲率半径が小さいほど電界が集中しやすくなるため低くなります。一般的に、水素以外が着火源になる可能性はほとんどありません。むしろ、産業現場における静電気応用分野で印刷、除電、静電塗装などで活用されています。



ブラシ放電

(2) ブラシ放電:発生メカニズムは上記のコロナ放電と同様ですが、接地金属が鋭くない、例えば指先のような曲率半径が数十mmのものが帯電物体に接近したときに起こる放電です。正確にブラシ放電の放電エネルギーを算出することはできないのですが、等価放電エネルギーは最大で4 mJ程度であると報告されております。コロナ放電に比べて放電エネルギーは大きく、可燃性ガスの着火源になります。粉じんの着火源となる可能性については 今も議論が続いていますが、非常に着火しやすい粉体、有機溶剤を含んだ粉体を取り扱う際には注意が必要です。



火花放電

(3) 火花放電:一般的に帯電した金属と周りに存在する金属の間で発生する単発の放電です。冬場に車またはドアノブを触ると電撃を受けることがありますね。それも火花放電です。帯電物体に蓄積されていた静電エネルギーのほぼすべてが放電に費やされるため、強い閃光と破裂音を伴います。着火能力が非常に高いため、多くの可燃性ガス・蒸気および一部の可燃性粉じんの着火源となり、静電気放電による爆発・火災の原因の過半数以上を占めています。火花放電の発生は全ての金属類を接地することで防止できます



コーン放電

(4) コーン放電:粉体などをサイロに充填するとき、円錐(コーン)状の堆積粉体の表面に沿って間欠的に発生する放電(別名:バルク表面放電)であり、粉体の抵抗率が高いほど発生しやすいです。ブラシ放電と同様に放電エネルギーを算出することは難しいですが、数十mJ程度と言われており、可燃性ガスのほか、充填物に微粉体が含まれる場合は着火危険性があります。コーン放電の発生は、粉体の抵抗率をできるだけ下げること(例えば:10Ω・m以下)、サイロをできるだけ小型にすること、サイロの内部の空間を区切ることなどで防止できます。



沿面放電

(5) 沿面放電:接地された金属板上(背面金属電極ともいう)におかれた薄い不導体のフィルムまたはシート状の表面が高電位で帯電した場合、その表面に沿って起こる強い放電です。産業現場では、内側にグラスライニングを施した化学反応容器、粉体の空気輸送で使用されるプラスチック管、液体輸送用絶縁性チューブで多く発生します。放電エネルギーが数十Jまでと非常に強く、可燃性ガス・蒸気はもちろん、可燃性粉じんの着火源にもなり得ます。多くの文献によると沿面放電発生の防止するためには、フィルムの厚みを8 mmより大きくする、または、帯電(表面)電位を4 kV以下にすることなどが有効であることが言われています。



 5つの静電気放電の特徴を理解することは静電気災害防止対策を行う際に重要です。なお、静電気放電の種類と着火能力について表1にまとめましたので、参考にしてください。最後に改めて強調すると、接地不良になった金属からは静電気災害を引き起こす可能性が極めて高い火花放電が発生するため、必ず、全ての金属は接地するように気をつけてください。またの機会がありましたら、次は静電気防止対策に必須である「静電誘導」「最小着火エネルギー」について述べたいと思います。


表1 各種の静電気放電とその着火能力
種類 放電エネルギー 着火能力
コロナ放電 接地した尖った金属が帯電物体に近づくときに発生 数十μJまで 水素などを除く可燃物の着火源にはならない
ブラシ放電 比較的大きな曲率半径を持つ接地金属が帯電した絶縁物に近づくときに発生 4 mJ程度まで ガス・蒸気, 粉体
火花放電 接地不良の金属に導体が近づくときに発生 1 J程度まで ガス・蒸気, 粉体
コーン放電 粉体をサイロに連続大量充填するときに発生 数十mJ程度 ガス・蒸気,粉体
沿面放電 背面接地金属にコーティングされた絶縁性フィルムが極めて帯電したときに発生 数十J程度まで ガス・蒸気,粉体

粉じんの着火源としては議論中だが、可能性を完全には否定できない。


参考文献

  1. 崔光石(2022)静電気災害防止のために知っておくべき基礎知識と勘違いしがちな対策(前編).TIISニュース, No. 288, pp. 5-8.

(電気安全研究グループ 部長 崔 光石)

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