労働安全衛生総合研究所

固形燃料ペレット貯蔵における自然発火

1.はじめに


 最近、木質ペレットを燃料とするバイオマス発電所において火災が多く発生しています。今年1月31日の愛知県武豊町の火力発電所の火災はまだ記憶に新しいと思います。昨年は、1月1日袖ヶ浦、1月23日下関、1月23日武豊、3月14日舞鶴、5月17日と9月9日米子(同一施設)で火災が発生しています。
 木質ペレットは間伐材などを原料に破砕し、直径6~8 mmの細長い円柱形に成形加工したものです。その地域の木材を活用するため、多様な原料木が使われています。熱帯地方の椰子殻なども原料に使われています(写真1:後述)。国内では木質ペレットのほか、固形燃料ペレットとしてはRDF(ごみ固形化燃料)やRPF(紙・プラスチック固形化燃料)(写真1)があります。RDFとは一般家庭から排出される生ごみを原料に、水分を除去して粉砕し、固化と発酵を抑制するため消石灰あるいは生石灰を数%添加して、円柱形に押し出し成形されたものです。RPFは紙やプラスチック廃棄物を原料とし、同様に押し出し成形して製造されます。

EFBペレット RPF(直径が大きいもの)
EFBペレット RPF(直径が大きいもの)
写真1 EFBペレットとRPFの外観

2.RDF貯蔵サイロでの爆発・火災


 木質ペレット、RDF、RPFなどの固形燃料ペレットは可燃性であるため、貯蔵中に自然発火する危険性があります。20年以上前ですが、平成15(2003)年8月14日、三重県多度町の三重ごみ固形燃料発電所のRDF貯蔵サイロ内で局所的な火災が発生し、かき出し作業と監視にあたっていた作業員4名が作業中に発生した小爆発で火傷、打撲などを負いました。その後もサイロ内で燃焼を継続していたため、消防による消火活動が行われていたところ、19日午後2時過ぎに当該サイロが爆発し、サイロの屋根で消火活動を行っていた消防士2名が屋根とともに飛ばされ、2名とも死亡し、ガス切断を行っていた作業員が逃げる際に1名が負傷しました。当時、同種のRDFと同形式の貯蔵サイロにおいて火災が続きました。これを契機に産業安全研究所(現 労働安全衛生総合研究所)や消防研究センターなどでRDFの爆発・火災の危険性が調べられ、対策が示されました1-4)


3.蓄熱発火における発火温度の測定


 一般に固形燃料ペレットなどの可燃物を大量に貯蔵した場合には、貯蔵した内部で酸化や解重合、水分などとの混触などの発熱を伴う反応が継続し、蓄熱して発火に至ることがあります。火災事例によっては、微生物発酵による発熱から発火に至る機構で説明されることもあります。爆発や火災の防止のためには、蓄熱発火に関する理論と試験による危険性評価手法が求められます5-7)
 実測による蓄熱発火の危険性評価試験の一つとして、断熱型の反応熱量計であるSIT(Spontaneous Ignition Tester)8,9)があります。詳細は文献を参照していただくとして、測定を行った結果を表1に示します10,11)。ここで、EFBとはパーム椰子空果房(Empty Fruits Bunch)から製造した木質ペレットの一つです。パーム椰子原料ではEFBに類似したものにPKS(Palm Kernel Shells)があり、これはパーム椰子の実から油を絞り出したかすです。EFBはパーム椰子の実をとった後に残る繊維状の房です。測定結果によると、石炭(粉状と粒状)の発火温度が低いことがわかります。活性化エネルギーが小さいほど、反応しやすいことを表しています。大豆(粉状)には油脂であるリノール酸やリノレン酸など不飽和脂肪酸を含み、そのため発火温度が低い傾向があります。発火温度はEFB(短く切ったペレット)110-120℃、RPF破砕物130-140℃で、木粉(ベイツガ)のそれよりも低いことがわかります。すなわち、低い温度に保って貯蔵する必要があることがわかります。具体的には貯蔵高さを低くします(後述)。


表1 SIT測定による発火温度10-11)
試料中位径
(µm)
発火温度
(℃)
活性化エネルギー
(kJ/mol)
石炭(瀝青炭)粉<250μm 164 50 - 60 55.9
石炭(瀝青炭)粒1-2.8mm 50 - 60 23.4
大豆粉<250μm 41 60 - 70 39.0
EFB(短ペレット) 110 - 120 57.6
EFB粉<250μm 120 - 130 95.4
ゴム粉<250μm 113 110 - 120 113.0
小麦フスマ 120 - 130 50.8
小麦全粒粉 150 - 160 122.0
RPF破砕物 130 - 140 98.5
木粉(ベイツガ)<250μm 56 175 - 180
木粉(ベイツガ<250μm 148 175 - 185 113.4
セルロース粉<38μm 180 - 190 285.0

4.貯蔵高さと発火温度


 可燃性固体が堆積した場合の堆積高さと発火温度の関係については、Frank-Kamenetskii(フランク-カメネツキー)の熱発火理論で説明されることがあります。理論計算では、密度、比熱、熱伝導室、堆積寸法、活性化エネルギー、発熱量、フランク-カメネツキーのパラメータ、頻度因子などの変数、物性値から発火する限界温度を求めます。これが実スケールでの自然発火に関する発火温度に相当します。図1に関係式から得られる限界温度の傾向を模式図で示します1)。堆積層の高さが増すと発火温度が下がることがわかります。
 電力中央研究所の木本と芦澤12)は、4種の木質ペレットについて実測した物性値をもとに、フランク-カメネツキーの理論式に代入して堆積高さと発火温度の関係を推算しています。計算結果を図2に示します。横軸は温度で、縦軸は直径です。寸法としては無限平板ではなく無限円筒を仮定し、高さではなく円筒直径で代表しています。仮に試料温度が30℃の場合、木質ペレット(海外B)では貯蔵直径が約6 mで発火する可能性があること、木質ペレット(海外C)では貯蔵直径が23 mで発火する可能性があること、海外Bと国産Dの木質ペレットが発火しやすいこと等がわかります。
 自然発火の防止のためには、堆積高さを低く抑えるか、それが難しい場合には窒素など不活性ガスを流通し、発熱を伴う酸化反応を抑制する必要があります。

図1 フランク-カメネツキーの熱発火理論による定性的な関係式<sup>1)</sup>

図1 フランク-カメネツキーの熱発火理論による定性的な関係式1)



図2 発火限界条件推定結果<sup>12)</sup>

図2 発火限界条件推定結果12)


5.まとめ


 固形燃料ペレットを貯蔵する際には、発火温度などの危険性を把握しておく必要があり、それに応じた管理が求められます。貯蔵するサイロにおいては、自然発火を防止するため貯蔵高さを抑制し、必要に応じて不活性ガスを流通させます。長時間貯蔵していると固形燃料ペレットがつぶれ、粉になってしまうかもしれません。また、日々の気温湿度の変化で吸湿するかもしれません。木質ペレットは添加物で固化しているわけではないので、吸湿するとほぐれやすくなります。最近頻発している木質ペレットの火災のニュースを聞くと、20年以上前のRDF貯蔵サイロの爆発・火災を思い出します。また、2011年の東日本大震災で大量に発生したがれきの仮置きで10 m以上高く積み上げてた状態で、火災が頻発したことも思い出します。今年1月に発生した令和6年能登半島地震において、大切な家財道具や思い出の品ががれきと称して処分しなければならないことにやるせない気持ちになります。さらなる災害を防止するためには、がれきを高く積み上げて火災にならないことを強く願っています。


(化学安全研究グループ 部長 八島 正明)

参考文献

  1. ごみ固形化燃料(RDF)の爆発・火災の危険性と安全な取扱いについて,産業安全研究所安全ガイドNIIS‐SG‐No.3(2004),産業安全研究所(現 労働安全衛生総合研究所),46p.,2004.
  2. RDF火災に関する調査研究報告書(平成15年度),消防研究技術資料第71号,消防庁消防大学校消防研究センター,332p.,2006.
  3. RDF爆発・火災に関する研究報告書(その1),消防研究技術資料第77号,消防庁消防大学校消防研究センター,250p.,2007.
  4. RDF爆発・火災に関する研究報告書(その2),消防研究技術資料第78号,消防庁消防大学校消防研究センター,281p.,2007.
  5. 清水芳忠,内田剛史,新井 充:廃棄物の蓄熱発火危険性と危険性予測(1), 神奈川県産業技術センター研究報告,No.16,pp.34-38,2010.
  6. 村沢直治:災害廃棄物・再生資源部品等の熱危険性評価および安全対策に関する研究, 千葉科学大学 博士論文,平成25年9月,2013.
  7. 岩田雄策:熱量計を用いた蓄熱発火の危険性評価方法,平成25年日本火災学会研究発表会概要集,pp.306-309,2013.
  8. 琴寄 崇,内藤道夫:自然発火試験装置の構造と性能,産業安全研究所研究報告RIIS-RR-27-2,pp.1-12,1979.
  9. 琴寄 崇:おがくず堆積層の熱発火限界温度,産業安全研究所研究報告RIIS-RR-85,pp.33-44,1985.
  10. 八島正明:自然発火試験装置(SIT)とグレーバ炉による有機物の粉粒体の発火温度測定,労働安全衛生総合研究所特別研究報告 JNIOSH-SRR-No.52(2022),pp.65-75,2022.
  11. 八島正明:バイオマス固体燃料ペレットの火災危険性に関する測定,第56回安全工学研究発表会予稿集,pp.87-88,2023.
  12. 木本政義,芦澤正美:木質ペレット貯蔵時の自然発火性に関する調査 -自然発火メカニズムと実証試験法-,電力中央研究所エネルギー技術研究所研究報告,M08022,27p.,2009.

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